Moon River

  • Oct 22, 2015
  • Pankie Koba

1961年 ジョニー・マーサー作詞、ヘンリー・マンシーニ作曲の同年公開された「ティファニーで朝食を」の主題歌。同年のアカデミー歌曲賞を受賞。(因みに翌年もこのコンビが「酒とバラの日々」でアカデミー歌曲賞を受賞。)

僕の学校の先輩でもある小田和正が、中学生の時に「ティファニーで朝食を」を観て初めて自分の小遣いで買ったレコードが「ムーン・リバー」だと言ってます。

揺れる水面に月光の筋が映りこんだ様子を「ムーン・リバー」とも言うらしいですが、実は作詞したジョニー・マーサーの故郷であるジョージア州サバンナの実家の裏に「バック・リバー」という物凄く大きな川があり、その川が「ムーン・リバー」と呼ばれているということです。

この歌詞の中に出てくるrainbow’s endというのはat the end of rainbow,there is a pot of gold(虹の端っこには金の壺が埋まっている)という諺から来ていて、曲がりくねった川の、次のカーブを曲がったところが夢が叶うところかもしれないという意味でしょう。

故郷にいた頃、幼馴染み(huckleberry friend)と冒険したり、いろいろ夢を描いた思い出の川、心のよりどころの川。今は大都会であまりパッとせず、フラフラしてるけど、故郷にいた頃、この川に沿って行けば、いつか夢の叶う所に行き着けると信じていた、その希望を忘れずに、これからもずっと胸に抱いて生きて行こう、そしていつか成功してみせる、そんな思いの象徴が「ムーン・リバー」なんじゃないかと思います。「いつか私は胸をはってあなたを渡ってみせるわ。」というフレーズには「いつか必ず成功してみせるわ」という強い気持ちが込められています。

オードリーが髪を洗ったばかりの姿でギターを爪弾きながら窓辺で歌うシーンは、あまりにへたなので、試写会の時パラマウント映画の新社長がカットするよう指示したらしいですがオードリーが「絶対にカットはさせません。」と猛烈な抗議をして残されました。オードリーの信念がなければ「ムーン・リバー」のあの象徴的シーンは消されていたのでしょう。またオープニング・シーンの、高級宝飾店ティファニーのショウ・ウィンドウの前で、タクシーから降りた主人公ホリーがコーヒーを飲みながらデニッシュを食べるシーンとの対比がオードリー・ヘップバーンの魅力を最大限に発揮しています。

余談ですが、原作者のトルーマン・カポーティはマリリン・モンローを主役にすることを条件に映画化を了承しましたが、モンローは娼婦役を演じることは、セックスシンボルとしてのイメージがますます強くなり、女優としてのキャリアにマイナスになると考え、出演を断りました。

ティファニーに資本主義の繁栄を象徴させ、富による繁栄の空しさとともに自由の大切さを描いた原作とは異なり、ハッピーエンドで終わる恋愛映画になってしまい、皮肉なことにこの映画の公開によって高級宝飾店ティファニーはそれまでほとんど知られていなかった日本でも超人気店となったのです。

また、主人公ホリー(オードリー・ヘップバーン)、日本人アーティストのユニオシ(ミッキー・ルーニー)、作家志望の青年ポール(ジョージ・ペパード)が住む安アパートがある、ニューヨークの超高級住宅街アッパー・イーストサイド地区には実は安アパートなどは1軒もなく、古い街並みを演出するためにこの地区にあるニューヨーカーに愛されているブラウンストーン・スタイルの古い建物が使われました。現在でも外観はまったく変わっていないということです。

「ムーン・リバー」、この曲は多くのジャズ・シンガーを始め、日本及び世界中の歌手が歌っている名曲です。ゆったりとした3拍子の曲で、音域も下がC,上がDまでと狭く、どこにも♭や#を使わず、構成もAメロ16小節、Bメロ22小節だけと短く、しかも最初の8小節はAメロ、Bメロまったく同じという非常にシンプルな曲です。まるで日本の唱歌やアイルランドの牧歌的な民謡のイメージがあり、ジョニー・マーサーの歌詞を忠実に表現していると思います。

ジョニー・マーサーは1,500以上もの曲の作詞を手掛けた人ですが、この頃は作詞家としてより、キャピトル・レコードのオーナーとして莫大な収入を得るようになっていました。そんなビジネスマンとしても成功した50歳を超えたこの頃、ハリウッドの高層ビルのオフィスから眺めた夜景にふと子供時代を思い出して作ったんでしょう。

晴れた日の夜、月島や佃の堤から見た、対岸の高層ビルの上に輝く月が映る隅田川はまさに「ムーン・リバー」そのものです。

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