Moon Glow
デトロイトのバンドマスターであるウィル・ハドソンが書いた曲で、ニューヨークに公演で来た時、アーヴィン・ミルズに頼んで歌詞を付け1933年にレコード化されましたが、大不況の真っただ中だったのでまったく売れませんでした。ところが翌年ニューヨークのバンドマスター、エディ・デランジが歌詞を短くし、ベニー・グッドマンがアレンジしたバージョンが大ヒット。ウィル・ハドソンが自分のバンドのテーマ曲として書いた曲が、ベニー・グッドマンオーケストラの十八番(おハコ)になってしまいました。
映画「ベニー・グッドマン物語」でもこの曲を演奏してますね。
そして1955年、ウィリアム・ホールデンとキム・ノヴァクが主演してアカデミー賞を受賞した映画「ピクニック」の挿入歌にもなり、リバイバルヒットしました。
アメリカでは9月の第一月曜日が「労働の日」(レイバーデイ)と呼ばれ、夏が去るのを惜しみ、お祭りをするそうです。
無一文の主人公ハル(ホールデン)が降り立ったカンサスの小さな町では、町中のみんなでピクニックに出かけるという風習があり、そのピクニックの場面で、月に照らされたハルとマッジ(ノヴァク)が「ムーングロウ」の曲で踊るシーンは何度観てもうっとりしてしまいます。月の魔力とノヴァクの美しさが合わさればどんな男性も一コロでしょう。もちろんマッジも恋に落ちてしまいますが。
この曲はフルバンドでのチークタイムに使われる曲で、アップテンポの曲で踊り疲れた後にこの曲で一緒に踊っているカップルは間違いなく恋に落ちるという名曲です。
最後にこの曲の歌詞と訳詞をご紹介しましょう。
It must have been moon-glow, way up in the blue. It must have been moon-glow, that led me straight to you.
(あれは青空に浮かぶ月明かりのせいだったのかな。その月明かりのおかげで僕は君と出会えたのかな。)
I still hear you saying “Dearone, holdmefast”. And I start inpraying, ohlord, please let this last.
(今も君の声が耳に残ってる、「早く抱きしめて!」。僕は神様にお願いする、この恋を終わらさないで。)
We seemed to float right thru the air, heavenly songs seemed to come from everywhere.
(あの時二人はまるで宙に浮かんだ気分になって、天国の歌があちこちから鳴り響いてきたんだ。)
And now when there’s moon-glow, way up in the blue. I always remember that moon-glow gave me you.
(おやおや、今も月明かりが青空に昇ってるみたい。僕はずっと忘れない、君を授けてくれた月明かりを。)
なにげないメロディーですが、リフの終わりの2小節をトニックだけにしてクロマチックのハーモニーを楽しむ手法や、サビの出だしの半音ずつ下がるメロディーとハーモニーは最近のポップスでもいろいろな曲に使われています。