偉大なる音楽家ジョン・レノン No.10

  • Aug 13, 2012
  • Pankie Koba

ビートルズ2作目の映画「HELP!」の撮影が1965年2月22日から5月12日にかけてバハマ、オーストリアなどで行われました。

その間を縫ってオリジナルアルバムとしては5枚目となる「Help!」のレコーディングを行います。

表題曲の「Help!」は1965年4月4日にジョンによって作られ、4月13日にレコーデイングされました。

人気が出れば出るほど周囲の期待は過剰になりプライベートな時間は皆無、パーティーなどで権力を振りかざし自分の娘にサインを無理やりさせるお偉方・・・ポップスターとして扱われることに疲れていたジョンは、厭世的な気持ちに苛まれてました。

自分が本当に求めていたものは人気や莫大な富ではなく、好きな音楽を自由に表現することだとボブ・ディランと会って再認識したジョンの心の悩みや葛藤をポップな楽曲に乗せて表現した傑作、それが「Help!」です。

この曲の前に、ボブ・ディランそのものと思える「悲しみはぶっとばせ」を作ってますが、もはや、ストレートに悲痛な叫び声をあげたかったんだと思います。

ただ、それを感じさせない見事なポップソングとして完成させたところがジョンの真骨頂であり、プロ魂でしょう。

余談ですが、当初は「Eight Arms To Hold You」というタイトルが「Help!」のシングル盤にも映画にもつけられる予定でしたが、きっとジョンの強い思いでこのタイトルに変わったのだと思います。

この曲で注目する点はまずジョンの表情豊かなリズムギターです。いつも通りノリがいいのと、所々でアコーステイック・ギターのボディを叩く奏法をしてみたり、アルペジオのニュアンスで弾いたりしています。特に最初の7~8小節目とサビの最後のフィンガリング・フォーム!2弦、3弦の開放を使って降りてくる大胆な発想力にまたまた脱帽です。

そして、サビから入る構成でストレートに心の叫びを表現してますが、ハーモニーの構成を微妙に変えることでビートルズならではの洗練さを醸し出してる所は大人ですね。

最初の「ヘルプ!」のハーモニーはコードBmの3度で辛さが直接伝わる感じですが、2番目ではコードGの4度、3番目ではコードE7の3度になり、そして最後にコードA7の6度ハーモニーで仕上げています。またサビの最後の「プリーズ、プリーズ、ヘルプ、ミー」の部分も3度から、5度、6度、3度と微妙に変化をつけてます。そしてエンディングもA6のコードに6度のハーモニーで締め括るなんて涙が出てきます。

このアルバムには、他にもジョンの特徴が感じられる曲があります。

そのひとつが「恋のアドバイス」です。ジョンの大好きな、流れるようなコーラスワークと転調の妙技は流石です。ここでも4度や6度の洗練されたハーモニーを効果的に使っています。

もうひとつは「涙の乗車券」です。こちらでもイントロ4小節後のリフ2小節目~3小節目の4度ハーモニー、そしてサビに入る前とエンディングの4度から5度、6度と変化させるハーモニーはシンプルなメロディーになんとも言えない彩を与えてます。

ジョンはこの映画の撮影期間中に心の葛藤がピークに達し、3月には旧友ピート・ショットンとジョージとでヘイリング・スーパーマーケットを設立したり、4月にはシンシア、ジョージ、パティ・ボイドとLSDを初体験しました。

その後ジョンはさらに自己の内面を探り、精神を解放していく方向に向かいました。

このアルバムはイギリスで1965年8月6日に発売され、アメリカでも「ビートルズVI」という編集盤が6月14日に発売され、その後イギリスとは別内容の「Help!」「イエスタデイ・アンド・トゥデイ」が次々と発売され記録的な大ヒットとなりました。

日本でも1965年9月15日に「4人はアイドル」というタイトルで発売され、映画も11月に公開されましたが、日本では何故かその年のチャートで1位になれませんでした。

それを阻んだのが、「サウンド・オブ・ミュージック」のサントラと、ベンチャーズの来日記念盤だったのです。

レンタルのはじめの一歩 →
『お申込/お見積』のご依頼を!

レンタルのお申込/お見積