名前
『名は体を表す』という言葉がある。
意味としては「名前がそのものの実体を表していること」。
日本には言霊という言葉もあり、言葉にはものの霊が宿っているという考えのもとに生まれた言葉で、「名は体を表す」ことが本当であって欲しいという古の人々の願いの表れとのことだ。
さて、名前といえば誰しも一度は耳にしたことがあると思うが、『寿限無』というものがある。
早口言葉や言葉遊びとして知られる古典的な噺で落語の前座噺であるアレだ。
「寿限無、寿限無、五劫の擦り切れ、海砂利水魚の、水行末・雲来末・風来末、喰う寝る処に住む処、藪ら柑子の藪柑子、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナの長久命の長助」という日本で最も長い名前として、しばしば語られている。
ちなみにバンコクの正式名称である「クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット」より長いらしい。
この「寿限無」は生まれた子供がいつまでも元気で長生きできるようにと考えて、とにかく長いものが良いととんでもない名前をつけた、という笑い話である。
ただ元々は「子供が川に落ちた」という言葉を人々がやりとりしているうちに、その長い名前が災いして助けが間に合わず溺れて死ぬ・・・という皮肉を含んだ話が時代に合わせ変更されたそうだ。
昨今にもこの名前の問題は潜んでいる。
そうキラキラネームと呼ばれるアレだ。
「昊空(そら)」や「心愛(ここあ)」、「希空(のあ)」に始まり「姫星(きてぃ)」や「黄熊(ぷう)」、「泡姫(ありえる)」、「今鹿(なうしか)」、「愛保(らぶほ)」と幅広い。
一見では読めない名前がつけられている。
以前SNSで回ってきたのだが、これらのキラキラネームの人たちが、事故などで緊急搬送される時に同意書などの書類作成時に読み方がわからず、書類をなんども作成する手間がかかったり、書類の取違いなどが発生することも間間あるそうだ。
なので、名前をつける際はなるべく普通の名前をつけてもらいたい。
子供の頃は良くても5・60代で「姫星」や「黄熊」になった時を想像してもらいたい。
名前に願いを込めるのは構わない。
ただ、「子供は親の所有物ではないのできちんと責任を持って名付けをしてもらいたい」と思う、今日この頃であった。