よこはま物語 その10

  • Jan 05, 2024
  • Daisuke Kobayashi

1858年の日米修好通商条約以降、諸外国とも次々に通商条約が締結され、幕府は1859年横浜港を開港。現在の象の鼻パークと大さん橋あたりに、貿易用の突堤を建設しました。

象の鼻あたりが「イギリス波止場」、大さん橋あたりが「メリケン波止場」と呼ばれていました。

そして1864年には、現在の山下公園中央部に「フランス波止場」と呼ばれる突堤ができました。(近くにフランス人居住区があったので)

1894年当時の大さん橋
1894年当時の大さん橋

1894年に大さん橋の前身となる「鉄桟橋」が完成。前述したように、神戸港の第二波止場が「メリケン波止場」と呼ばれる前からそう呼ばれていました。よこはま物語その2で紹介した、淡谷のり子の「別れのブルース」にも横浜のメリケン波止場(こちらは本牧です)が登場しています。

神戸港の第二波止場前には米国領事館があったので、その呼び名は神戸の方が定着していったのでしょう。

因みに、「アメリカ」「アメリカン」の発音が、当時の日本人には「メリケン」としか聞こえなかったので、そう呼ばれるようになったそうです。

1964年頃の大さん橋
1964年頃の大さん橋

現在の大さん橋
現在の大さん橋

1906年に新港埠頭が完成し、そこに1913年に赤レンガ倉庫(国営保税倉庫)ができ、その後、瑞穂埠頭、山下埠頭、本牧埠頭と、次々に貨物を扱う埠頭ができました。それは大さん橋を大型客船専用の桟橋にするためでした。

大さん橋ストリートの風景 その1
大さん橋ストリートの風景 その1

大さん橋ストリートの風景 その2
大さん橋ストリートの風景 その2

大さん橋ストリートの風景 その3
大さん橋ストリートの風景 その3

大さん橋ストリートの風景 その4
大さん橋ストリートの風景 その4

1960年代になると来日する外国人観光客も、渡航する日本人も目覚ましい勢いで増えていき、大さん橋ストリートには飲食店が建ち並ぶようになっていきました。

1930年完成のジャパンエキスプレス本社ビル
1930年完成のジャパンエキスプレス本社ビル

1929年完成の横浜海洋会館のビル
1929年完成の横浜海洋会館のビル

海岸通り1丁目までやってきました。

1930年にできた、船客送迎や移民乗船の斡旋を行うジャパンエキスプレス本社ビルと、1929年にできた横浜海洋会館のビル(元は貿易商社の大倉商事横浜出張所)に挟まれるように建つのが同じ褐色のスクラッチタイルのビル、横浜貿易協会ビル。こちらも1929年にできました。ここに横浜を代表するレストラン「スカンディヤ」があります。

スカンディヤがある横浜貿易協会ビル
スカンディヤがある横浜貿易協会ビル

スカンディヤ内観
スカンディヤ内観

スカンディヤ内観
スカンディヤ内観

「スカンディヤ」は1963年このビルの2階にオープンいたしました。

その後カジュアルに楽しめる1階のレストラン「スカンディヤガーデン」もオープンいたしました。スカンジナビア政府観光局からお墨付きをいただいている日本でも数少ない北欧料理のレストランです。定番のアイスバイン(豚の前足すね肉塩漬け)やフリカデラ(デンマーク風仔牛のミートボール)、うなぎのソテーデンマークスタイル、スモーガスボード(デンマーク流ビュッフェ)、にしんの燻製ノルウェースタイルなどが有名です。

ヘルベルト・フォン・カラヤンやエリザベス・テイラーも訪れたことのあるお店で、ユーミンが婚約時に両家の顔合わせをここで行ったことでも有名になりました。

ここのオーナー濱田八重子さんは、1950年代、友人と大阪から横浜に遊びに来て、デンマーク人のご主人と知り合い、あっという間に結婚したそうです。

1960年頃、濱田八重子さんは、県庁と神奈川県警の間にあるビルの地下に「スリーネーション」というお店をオープンしました。スリーネーション(3つの国)とはデンマーク、ノルウェー、スウェーデンです。このお店もジュークボックスで踊れるパブでした。船員や米兵で連日朝まで超満員だったそうです。

同じ頃、ご主人は中華街に有名なカウンターバー「コペンハーゲン」をオープンさせます。

話は少し逸れますが。1950年代から70年代初めまでの中華街の裏通りは、酒と女を求めて来る外国人相手のバーがひしめき合い、「ハッピーアベニュー」と呼ばれていました。一番多い時には138軒ものバーが裏通りにあったそうです。しかし血の気の多い軍人や船乗りですから、毎晩いろいろなお店でけんかが起こる物騒な街だったので、中華街は「ブラッドタウン」(血なまぐさい街)と呼ばれるようになりました。

なんと中華街にまったくコネのないデンマーク人のご主人が周りの如何わしいバーとはまったく違う格調高いバー「コペンハーゲン」をオープンさせたのです。入口には屈強なボディーガード風の外人がいて、まさに異国が味わえる名店でした。(2004年頃に閉店してしまいました。とても残念です。)

スカンディヤの入り口にはスリーネーションの国旗が飾られています。今年60周年を迎えました。

オーナーの濱田八重子さんは93歳になられました。今はたまにしかお店に顔を出さないそうです。4、5回しかお話したことはありませんが、横浜もお店も心から愛し続けてきた強い信念が感じられる方です。

この1月にはお店にお伺いいたします。もう一度お会いできると信じて。

スカンディヤ オーナー 濱田八重子さん
スカンディヤ オーナー 濱田八重子さん

皆様にとりましても今年がよい年になりますよう、元日に撮影した朝焼けのベイブリッジをご覧ください。

朝焼けのベイブリッジ

 

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