よこはま物語 その11
山下公園前にある神奈川県民ホールの真裏に、「THE HOF BRAW」(ホフブロウ)という横浜の老舗洋食屋があります。
1980年からこの場所で営業していますが、実はもっと長い歴史があるのです。
1947年海岸通りにオープンしたホフブロウ
ホフブロウは1947年、今のシルクセンター(山下町1番地)の向かい側にオープンしました。
白っぽい漆喰の一軒家でした。
店名にはドイツ語の「HOF BRAW」の前に何故か「THE」が最初から付いていますが、アメリカ人やイギリス人のお客様の事も考えたのでしょう。
オープン当初のメニューには、ドイツ系の料理はハンバーグ、ソーセージ、ポテトサラダジャーマン風しかなく、ステーキ、ナポリタン、ミートソース、シシケバブ、ピザがメインでした。
親父の勤め先が近かったのと、休日に行くところは山下公園がほとんどだったので、小学生の頃、数回だけ連れて行ってもらいました。
外食はとても贅沢なことで、おふくろと一緒の時は滅多に外食できなかったので、親父が内緒で連れて行ってくれたんだと思います。
外国のような雰囲気と外人女性のウエイトレスさんが、僕に強烈な異国への憧れを抱かせてくれたのを覚えています。
店名の「HOF BRAW」ですが、ミュンヘンの1,300人も入れる「ホフブロイハウス」が名前の由来だという説がありますが、実際は、ドイツ バイエルン州北東部に「HOF」(ホーフ)というビールの有名な産地があり、そこの「BRAW」(醸造所)という意味なので、「ホーフにあるビール醸造所の食堂」という感じです。
また、このお店の初代オーナーはフィンランド人のコモルアンドコモルさんだという説がありますが、「コモルアンドコモル」というのはお店(会社も)の名前で、ジョージ・コモルというアメリカ人が、山下町1番地に終戦後オープンした雑貨店です。
初代オーナーはハンガリー人のゲオルゲ・コモルさんで、その後ノルウェー人の元船長ハンク・ソレンソンさんが買い取り、お店はシルクセンター脇に移転。そしてジョ-ジ・コモルさんの会社「コモルアンドコモル」が次のオーナーになり、1980年に今の上田ビルに移転しました。
現オーナーの上田フサ子さんはこのビルの持ち主で、1999年に「コモルアンドコモル」のタイピストの方から譲り渡す話を持ちかけられ、4代目オーナーになりました。国名も人名も紛らわしいので、諸説誕生したわけです。
因みに現在のお店を設計したのはノルウェーのデザイナーだそうです。
余談ですが、この上田ビルと同じ頃に建てられた隣のインペリアルビル(1930年誕生)も上田さんの所有ですが、両方とも爆撃を免れました。
1930年に外人専用アパートメントホテルとして誕生したインペリアルビル
ホフブロウの一番の人気メニューと言えば「スパピザ」(ピザ風スパゲッティ)です。1980年にここに移転してからできたメニューだそうです。
ドイツの家庭料理をアレンジしたもので、チーズの少し焦げた香ばしさが堪りません。まだ召し上がったことのない方は是非!女性にはかなりボリュームとカロリーがありますが。
ホフブロウの一番人気メニュー「スパピザ」
今ではメニューも充実し、ソーセージ、ハンバーグ、ザワークラウド、ジャーマンポテト、ウインナーシュニッツェル、アイスバインなどのドイツ料理をはじめ、シーフードドリア、ナポリタン、ステーキ、カツレツ、各種ピザ、スペアリブ、ミートボール、ビーフシチュー、カレー、サラダ、スープと豊富で、土日祭日は予約なしでは入れないほどの人気店になりました。
バーカウンターもとても洒落ています。
ホフブロウのバーカウンター
今はもうメニューにはないですが、もう一つの名物メニューだった「ビックリカツカレー」をご紹介します。ご飯だけで1.5kg以上あります。
このメニューはもしかしたら、隣の蕎麦屋「味奈登庵」(1968年開業)の名物「富士山盛り」に対抗して作られたのかもしれません。
因みに富士山盛りは1kgあり、5~6人前ほどですが、値段は並盛りと同じです。是非一度挑戦してみてください。話のネタになりますよ。
僕は富士山盛りは何度も制覇しましたが、ビックリカツカレーは一度も完食できませんでした。もう挑戦できないのが残念です。
ホフブロウの名物メニューだった「ビックリカツカレー」
味奈登庵の名物メニュー「富士山盛り」