よこはま物語 その20
野毛にあったバー「世界のカクテル 山荘」です。
1955年にオープンしてから約59年間、野毛の顔として多くのファンに愛され続けてきました。
写真のお店は1970年の火事で全焼した後に建て直されたものです。
ですが、地主さんからの立ち退き要請で、残念ながら2014年1月20日に閉店してしまいました。
1955年オープン時の「山荘」とマスターの黄野長康さん
マスターの黄野長康さんは台湾のご出身で、戦後まもなく日本に来てから新宿の寿司屋さんや喫茶店で働いていました。
昭和30年代の登山ブームから「山荘」と名付け、山小屋風の建物にしたんですね。
でも、山のことはまったく知らない人でした。
お店のキャッチコピーは最初「しあわせを売る店」でしたが、建て直した後に「世界のカクテル」に変えたそうです。
マスターの黄野長康さんは閉店直前の2014年1月3日、91歳で亡くなられました。
山荘の店内
マスターのご長男 敏文さん(左側)とバーデンダーのジローさん
バーテンダーのジローさんは元会社員で山荘のお客さんでしたが、1970年に会社を退職し、職探しをしていた時、マスターから誘われバーテンダーになりました。
カクテルの作り方もここでゼロから学びました。本名は佐田力(つとむ)さんですが、覚えにくいということでマスターがジローさんと名付けたそうです。
再オープンした「世界のカクテル 山荘」
ですが、なんと2014年2月25日に山荘は再オープンしたのです!
山荘の大ファンの金子さんというお客さんが自分の所有している建物の2階でやらないかと、バーテンダーのジローさんに話を持ち掛け、多くのファンの方々の後押しもあり、ジローさんが店主としてオープンしました。
黄野さんの奥様も快くお店の名前やインテリアを譲ってくれ、居心地の良い昔の雰囲気を再現することができました。
外の看板と再オープンした山荘の店内
外看板もカウンターもイスも、後ろのカクテルメニューも、黄野さんが書いた文字看板も、酒棚も照明も階段の丸太もすべて前のお店から持ってきたものです。
今でも大活躍のジュークボックス
なんと言っても山荘のシンボルであったこのジュークボックスが健在なのには驚きです。
1970年から50年以上活躍している、とてもレアなドーナツ版(CDではなくレコードです!)のジュークボックスです。
100円で2曲、200円でなんと5曲もかけられるんです!
針を落とした時のジージーザーザーという音が堪らなくノスタルジックな気分にさせてくれます。
現役で活躍しているレコードのジュークボックスがあるお店は他に曙町の「アポロ」と、瑞穂ふ頭の「スターダスト」だけでしょう。
黄野さんが大好きだった洋画の主題曲も多く入ってますね。
前のお店のままのカクテルメニュー
今もカクテルはほとんど700円~800円で値段はほとんど変わってません。
チャージも一切なしです。
オリジナルの山荘カクテル
ジンベースでペパーミントの香りが爽やかです。
現店主のジローさん
ジローさんは穏やかで人当たりもよく、とてもまじめな方です。
来年80歳、まだまだ頑張ってください!。