よこはま物語その31

  • Nov 21, 2025
  • Daisuke Kobayashi

中区本牧三之谷にある三溪園
中区本牧三之谷にある三溪園

三溪園の全体図
三溪園の全体図

三溪園は、17.5haの敷地に国の重要文化財12棟、横浜市指定有形文化財3棟を含む17棟の貴重な日本建築が配置されている庭園で、実業家で茶人の原富太郎によって造園され、1906年(明治39年)5月1日より外苑部分の一般公開が始まりました。

原富太郎の茶道の号である三溪から、「三溪園」と名付けられました。

三溪園の大池と旧燈明寺三重塔
三溪園の大池と旧燈明寺三重塔

原富太郎の養祖父 原善三郎は1862年(文久2年)中区弁天通に生糸売込商「亀屋」を開業。

後に「原商店」と改め、一代で横浜屈指の生糸取扱い業者となりました。

善三郎は生業のかたわら、銀行頭取・横浜市初代市会議長・衆議院議員・貴族院多額納税議員としても活躍。

1868年(明治元年)三溪園一帯の土地を購入し、別邸として整備しました。

善三郎は明治20年頃、この土地の山上に別荘「松風閣」を建てましたが、残念ながら関東大震災により、全壊してしまいました。

現在は1964年(昭和39年)に建てられた展望台になっています。

因みに、本邸のあった野毛山は現在野毛山公園になっています。

 

原富太郎(旧姓 青木)は岐阜県の出身で、東京専門学校(現 早稲田大学)卒業後、跡見女学校の教師を務め、そこでの教え子であった原矢寿(善三郎の孫娘)と1892(明治25年)年に結婚し、原家に入りました。

1900年(明治33年)原商店を原合名会社に改め、生糸の輸出業を開始。

三井物産などに並ぶ5大生糸輸出業者になり、群馬の富岡製糸場をはじめ、3製糸場を三井家から譲り受け、先代以来の埼玉・渡瀬の工場と合わせ4製糸工場を経営。

また、いくつもの銀行の頭取・取締役・相談役も歴任しました。

原富太郎(原三溪)
原富太郎(原三溪)

実業家の富太郎(三溪)は日本の近代美術史に特筆される希代の美術品収集家でもあり、日本や中国の古美術品(書画や茶道具)を何千点も集めるとともに、同時代の画家 横山大観、下村観山、安田靫彦、今村紫紅、小林古径、前田青邨らの作品を購入したり、生活費を援助したり、新進の美術家たちを育てたパトロンでもありました。

また、自ら絵筆をとることを無上の楽しみとした美術家であり、そして作庭、建築、茶の湯をこよなく愛したスケールの大きい数奇者でもありました。

三溪園の内苑の草花を愛でる原富太郎(三溪)
三溪園の内苑の草花を愛でる原富太郎(三溪)

富太郎(三溪)は1939年(昭和14年)に71歳で亡くなりました。

私財を投じて作り上げた三溪園は、関東大震災の時に数棟の建物が損壊し、第二次世界大戦時の横浜大空襲でも大きな被害を受けましたが、1958年(昭和33年)建物・庭園の復旧工事が終了し、現在は公益財団法人三溪園保勝会により保存・管理され、外苑も内苑も一般公開されています。

これからも多くの人に愛される日本庭園として、いつまでも残っていてほしいと心から願っています。

 

それでは、2007年に国の名勝に指定された三溪園の素晴らしい古建築物を見ていきましょう。

鶴翔閣(横浜市指定有形文化財)
鶴翔閣(横浜市指定有形文化財)

1902年(明治35年)三溪が外苑に自らの住まいとして建て、交流のあった文化人や政財界人そして育てた画家たちが多く出入りした場所としても知られています。

現在は1日1組限定の結婚式場として使用されています。

鶴翔閣の結婚式
鶴翔閣の結婚式

旧燈明時寺三重塔(重要文化財)
旧燈明時寺三重塔(重要文化財)

室町時代の1457年(康正3年)に京都の木津川市の燈明寺に建てられた塔。

1914年(大正3年)外苑の山上に移築されました。

旧矢箆原家住宅(重要文化財)
旧矢箆原家住宅(重要文化財)

江戸時代後期に飛騨の白川郷に建てられた合掌造りで、1960年(昭和35年)外苑に移築されました。

園内にある歴史的建造物の中で唯一内部を見学できます。屋内には飛騨地方の民具が展示され、いろりでは毎日薪がくべられています。黒光りした柱や煙の匂いが昔の生活を彷彿とさせてくれます。

現存する合掌造りでは最大級の民家です。

臨春閣(重要文化財)
臨春閣(重要文化財)

臨春閣(重要文化財)
臨春閣(重要文化財)

江戸時代の1649年(慶安2年)に、紀州徳川家初代藩主の頼宣が和歌山の紀ノ川沿いに建てた数寄屋風書院造りの別荘。

1917年(大正6年)内苑に移築されました。

聴秋閣(重要文化財)
聴秋閣(重要文化財)

江戸時代の1623年(元和9年)に、京都二条城内に建てられた、徳川家光・春日局ゆかりの楼閣建築。

1922年(大正11年)内苑に移築されました。

聴秋閣から三重塔を望む
聴秋閣から三重塔を望む

晩秋の三溪園は素晴らしい紅葉を愛でることができます。

是非、今週来週あたり出かけてみてはいかがでしょうか!

 

 

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