よこはま物語その32


前回紹介いたしました三溪園入口脇の道を右に曲がり、道なりにしばらく歩くと、「隣花苑」という表札がある黒い門が見えてきます。その中に入ると・・・


ここは600年以上前の足利時代に建てられた古民家を、原三溪が長女春子のために昭和5年に移築したもので、西郷健雄と結婚した後も約30年間自宅として使用していました。
春子が亡くなった後、春子の長男健一郎の嫁である西郷俊子が一大決心をして日本料理のお店に改装し、1963年「隣花苑」がオープンしたのです。
「隣花苑」とは三溪が好んだ「隣花不妨賞」(隣花、賞するを妨げず)という漢詩に由来しているそうです。
「花というのは垣根を高くせずみんなで愛でよう」という意味で、一年を通じて花を楽しみながら、食事ができる場所にしたいという俊子の願いが込められたお店です。
そしてこのお店には料亭や割烹のような板前さんはいません。原家に代々伝わってきたお客様をもてなす家庭料理なんです。
俊子が亡くなった後は、祖母の春子に可愛がられた孫の西郷槙子が2代目女将として頑張ってきましたが、建物の老朽化が進み、保全のため大規模な修復工事が必要となったので、残念ながら、2020年8月2日をもって閉店となってしまいました。
それではもう見れないかもしれない隣花苑の中を覗いてみましょう。






次に隣花苑のコース料理をご紹介いたしましょう。
原家に代々伝わる見事な器もご堪能ください。









これは原三溪が自ら考案した「三溪そば」です。
今でも三溪園の外苑にある「待春軒」で食べられますよ!





隣花苑2代目女将の西郷槙子さん
1976年、31歳の時から隣花苑でお母様と一緒に働くようになり、2006年にお母様が亡くなられた後、2代目女将になりました。
初めて訪れた時にも我が家に来たお客様のように気さくに話をしてくれたのを覚えています。背筋がピンと伸びて物腰の柔らかい笑顔が素敵な方でした。
お祖母様お母様そして槙子さんにも、日本の美を心から愛した三溪翁の精神が脈々と受け継がれてきたのでしょう。